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    映画「WAX PRINT」

    • 2019.02.28 Thursday
    • 13:12

    映画「WAX PRINT」を見てきました。

    かなり興奮しております。
    まさに私にドンピシャのテーマの映画だったから。


    まず、この映画を作った人物から。
    Aiwan Obinyanというナイジェリアにルーツを持つ若い女性。イギリスで育ち、現在もイギリスで暮らしている。
    小さい頃はアフリカ人であることから周りのブリティッシュ白人からいじめにあい、アフリカらしいもの、
    アフリカが際立ってしまうようなものを排除し、WAX PRINT と呼ばれるアフリカの布を拒否していた。


    そんな彼女は今ではWAX PRINTを使って服を作っている。
    現在では、ヨーロッパではアフリカンWAX PRINTは若い世代にファッションとしての注目を集めているらしく、
    WAX PRINTの服を身に着けることで、自分のアイデンティティ、自分を表現するツールとして、
    ルーツをアフリカに持つ人たち(そしておそらくは生粋のユーロピアンたちにも)の中で人気があるようのだそうだ。


    WAX PRINT、私も昔から疑問に持っていたことがたくさんある。
    起源はどこにあるんだろう?
    インドネシアのバティックと聞いたことはあるけど、どうしてそれがアフリカで広まったんだろう?
    現代でもアフリカで作られていることは少なく、オランダのVLISCO社があんなにも有名なのはなぜ?
    中国産やインド産の布が多く出回っているけれど、アフリカの中ではそれがどのように受け入れられているの?


    そんな疑問をひとつひとつ紐解いてくれるような映画の内容だった。
    歴史を知るのは本当に面白く、布の持つ意味やその背景について、
    これから私も少しずつ、ワークショップなどを通して伝えていこうと思っている。


    そして映画が進むにつれ、この映画のテーマは単に布の歴史だけではないことに気づく。
    文化の盗用や資本主義経済の闇、またアイデンティティの問題にフォーカスされていく。


    WAX PRINTはアフリカ人のものなのか?


    もともとはオランダ人がインドネシアを植民地化した際に、バリのバティック技術を事細かに研究し、
    自国へ持ち帰り、独自のやり方で布を生産し始めた。


    バティックの特徴として、偶然にも出来上がるロウがたまたま残った部分が生み出すクラック(ひび割れ)や、点々模様がある。
    だから一つとして、同じ模様の布はない。偶然が生み出すズレやひび割れ模様が、なんとも味わい深い特徴。
    それを、オランダの工場では染色の工程内で、機械でわざわざ作り上げたのだ。
    この不完全さを生み出す。完全に、不完全さを作り出す技術。
    これが今でもWAX PRINTの面白さで、人々を引き付ける魅力でもある。


    そしてインドネシアに市場を求めたけれど上手く受け入れられかなかったため、
    アフリカの市場を良く知る宣教師たちを通し、アフリカへと市場が移った。
    アフリカでは特に女性たちがパワーを持っていて、Nana Benz と呼ばれる女性たちの力で、広まっていった。
    アフリカの女性はどんな模様を好むのかを知っており、いわばマーケティングを担っていたとも言える。
    また布の模様にもアフリカの女性たちが意味を持たせるようになる。それを身に着けることで、暗に自分の思いを表現するように。
    しかし間もなくすると企業が直接ビジネスに関わることが出来るようになる。


    アフリカには独自の布の生産技術がもともと存在した。
    泥染め、藍染め、ろうけつ染め、ケンテ織り、など、綿を育て、紡ぎ、織り、染色し、作り上げていた。
    そこにバティックから生まれたWAX PRINTが入り込み、日常に浸透していった。
    しかしこれはもともとアフリカで生まれたものではなく、インドネシアが源であり、材料のコットンはアメリカであり、
    布自体の生産はヨーロッパなのだ。
    市場がアフリカにあったというだけ。


    そして、今では正統なWAX PRINTと、中国などでただコピーされた偽物が、マーケットにはあふれかえっている。
    コピーの技術は非常に高く、生産番号やプリントの色などを見比べても、識別するのが困難になってきている。
    しかし中国製の布は安く、布の質や印刷の技術がほとんど変わらないのであれば、一般の消費者にはどうしても受けやすくなる。
    中国が自分でデザインしたものを自分の会社のロゴを付けて販売すれば問題はないのだが、
    実際は、デザインはそのまま真似したもので、さらにはVliscoのロゴなどもそのまま使っているのだ。
    そして、結果として、もともとWAX PRINTを生産していた会社は、撤退を余儀なくされている。


    中国はVlisco社の真似をしている、でもVliscoもバリのバティックを真似した、とは言えない?
    文化の盗用という点では同じじゃないの?


    その答えはきっと人それぞれだろう。
    そして、現代のWAX PRINTが本当にアフリカの物なのか、という問いに対しても。


    また、文化の盗用という点においては布だけに言えることではなく、
    アフリカの伝統的な文化というのは、これまでも多くが西洋に摂取され、乱用されてきた。
    そしてオリジナルであるアフリカンたちには何も利益はなく、
    それを真似て市場に売り出した人たちだけが、多くの利益を生み出している。
    ひとつの例を出せば、シャキーラのwaka wakaという曲はもともとはカメルーンのミュージシャンが作った曲らしい。
    けれど、誰もそれは知らない。
    豊かな文化と知恵に恵まれたアフリカは、経済中心のグローバル社会に今でも利用されている。


    映画のロケはヨーロッパとアフリカで行われていた。
    その中でも、ガーナのエルミナ城での、Aiwanともう一人の映画製作に携わった若い女性のインタビューが、
    とても静かに響く内容で、私の心は揺さぶられっぱなしだった。


    エルミナ城は、いわゆる奴隷船が運ばれる港。
    ここに多くのアフリカ人が集められ、船に乗せられ、白人たちの労働力となるために見知らぬ地に売られていった。


    今現在、南北アメリカやヨーロッパに住むアフリカンたちのルーツは紛れもなくこの大陸である。
    例え生まれも育ちもイギリス、国籍もイギリス人だとしても、もともとは、こういった港から祖先が運ばれていったのだ。
    ヨーロッパに暮らすアフリカ系の若者たちに、祖先に伝えたいメッセージは?とインタビューしたところ、
    「Thank you」と 皆口にしていた。


    Aiwanは映画を撮る前は、祖先たちに対して「なぜ戦わなかったの?」と疑問に思っていたらしい。
    戦って、自分の運命を変えようと努力しなかったのだと思っていたから。
    けれど、エルミナ城を訪れて、あの時自分の祖先たちは自分たちが出来るベストな選択、
    「生きること」を選んだ。そして奴隷船に乗った。だからこそ、今の自分がある。と気づいたのだ。
    今の自分がここで生きているのは、彼らが生きてようとしてくれたから。
    今の自分とアフリカの祖先のつながりを深く感じる、と。
    怒りではなく、ただ深い悲しみを感じているけれど、そのつながりに感謝すると。
    初めて「Thank you」という言葉を心の底から先祖に送りたい、と。


    私の娘も半分ガーナの血が入っている。
    エルミナ城、私も実は彼女がおなかにいる時に行ったことがあるのだけど、中には入らなかった。
    なんだかツーリスティックすぎる感じがして、そして気軽に入ってはいけないような気もして。
    行っておいたら良かったかな、と今少し後悔している。


    私の娘も、成長していく過程で、自分のルーツについて考えるようになるのだろう。
    日本で生まれ日本で育った、けれど確実にあの大陸から血を受け継いでいる彼女が、
    いつかアフリカ人であることに悩んだり、疑問を抱いたり、誇らしく思ったり、する時が来るんだろうな。


    映画が終わった後、上映会会場で、AiwanさんとスカイプをつないでリアルタイムのQ&Aセッションが設けられた。
    ちょっと自分の娘とAiwanさんが重なって見えた私は、彼女にこんな質問をしてみた。
    「子供の頃はアフリカらしいものを拒絶していたと言っていたけれど、今ではアフリカのWAX PRINTで服作りをしたり、
     アフリカの映画を作ったりしている。どうやって、考え方が変わっていったの?」


    彼女は、マルコムXの本を読んだから、と教えてくれた。
    彼の生き方を知り、自分の考え方も変わっていったのだと。


    覚えておこうと思う。
    私も改めてマルコムXについて知りたいし、自分の娘が大きくなったら、読ませてみたい。


    彼女も、日本の家族だけではなく、遠いアフリカの祖先たちに「Thank you」と思う日は来るのだろうか。




    追記:そういや先日のアカデミー賞で、スパイク・リーが脚色賞を受賞しましたね。
    昔から大好きな監督。彼確かマルコムXの映画撮っていたはず!見ようかな。

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